今日のおすすめ本
花さかじい
椿原 菜々子(著), 太田 大八(イラスト)
「花さかじい」は福島県・群馬県に伝わる昔話
花咲かじいさんのお話は多くの人がご存知のお話だと思います。詳しい内容は忘れていても、花を咲かせるおじいさんの姿を絵本などで見て印象に残っているのではないでしょうか。
このお話は、人柄の良いおじいさんと、欲深なおじいさんが出てきて対比のようになっています。ざっくり言うと、欲が深すぎるとろくなことないわな~という内容で、舌切り雀などと似たストーリーです。
花咲かじいさんはいろいろな本が出版されていますが、今日紹介する「花さかじい」の本には、最後に著者の解説文が載っていて、より深くこのお話を楽しめるようになっています。川上から流れてくる香箱の話は、なるほど!と感心してしまいました。なぜ川上から流れてくるのかなんて、私は考えたこともありませんでした。他にも、犬のことや灰のことなど、見出しを立てて個別に書かれているのでわかりやすいです。
絵本ですが、大人にもおすすめしたい一冊です。
味わい深い方言。声に出して読みたいお話
著者の椿原菜々子さんによると、この本は福島県地方の方言で書かれているそうです。そのためか、登場人物たちの様子が生き生きと伝わってきます。方言で書かれた昔話には温かさだけでなく、力強さや奥深さを感じます。
初めて読むと少し慣れなくて読みづらく思うかもしれませんが、何回か読むとすらすら読めるようになります。お子さんに読んであげるなら、そのまえに一度、ご自身だけで読んでみてください。
登場人物の言葉は読み方に抑揚をつけて気持ちを込めて読むと、聞いている子どもも物語にグッと引き込まれて来るのがわかります。気に入ったセリフを声に出してみるのも楽しいです。
色の組み合わせが素晴らしくて美しい、太田大八さんの挿絵
挿絵は太田大八さんです。「花さかじい」以外の本にもたくさんの絵を描かれています。
全体的には落ち着いた色合いの絵です。場面の状況に合わせて寂しげだったり、心がパッと明るくなるような色だったり、色の組み合わせがとても美しいです。
灰が枯れ草に意図せず降りかかる場面があるのですが、そこの挿絵が特に好きです。おじいさんの心情が伝わってくるような絵です。朱色と濃い青を組み合わせて鮮やかさを演出しているところが素敵です。
大人が子どもに読んであげてほしい本
字は小さめですが、漢字にはふりがながついています。小学校1・2年生から自分で読める本だと思います。絵本ですが3年生以上の子にもおすすめです。
方言が使われているため、幼稚園くらいの小さな子がいきなり一人で読み始めるのは大変かもしれません。大人が声にだして読んであげると方言の温かみが伝わってお話の世界を楽しめそうです。