今日のおすすめ絵本
ぼくは王さま
寺村 輝夫(著), 和田誠(イラスト)
1960年代から愛され続けている本
「新・名作の愛蔵版」として2000年に初版が出ていますが、もともとは1961年に発行された書籍のようです。それが何度か体裁がかわって、今の「新・名作の愛蔵版」になったみたいです。挿絵も当時のまま和田誠さんのようです。
他にも同じ出版社(理論社)から「寺村輝夫の王さまシリーズ」としてたくさんの本が出ていますが、そちらは挿絵が和歌山静子さんに変わっています。和歌山さんの絵もかわいらしくて温かみのある絵なので読み比べてみるのもいいかもしれません。
ちょっとわがままだけど、時々がんばる!どこか誰かに似ている王さま
「ぼくは王さま」を読んでいると、王さまは愛嬌があって、誰かさんに似ているなあと思うのです。王さまは大人なんだけど、発言や行動が子供っぽいところが魅力です。わがままで、大臣に無理難題を言ったりするけど、興味のあることには一生懸命なのです。そんなところが子どもたちの共感を呼ぶのではないでしょうか。思い込みが激しかったり、好奇心が旺盛だったり、人間味のあるキャラクターだからこそ長く愛されるんだと思います。
笑いや、思いもよらない発想に富んだ作品ばかり
「ぞうのたまごのたまごやき」は、ぞうのたまごを手に入れるために、3人の大臣以下多くの大人たちが奮闘します。
ぞうのたまご…と聞いた時点で大人なら話のオチはなんとなく想像ついてしまうかもしれません。それでも、子どもの言うことに翻弄される大人たちの様子が面白かったり、ところどころに出てくる歌が楽しくてどんどん先が読みたくなるお話です。
私は「しゃぼんだまのくびかざり」も好きです。このお話では王さまはとてもがんばって願いをかなえるのですが、単純にめでたしめでたしという終わり方ではありませんでした。そんな結末もふくめて好きなお話です。
「ウソとホントの宝石ばこ」は奥が深いというか、これは哲学的なお話だなというのが感想です。小さなことからだんだん大きな問題になってしまいます。そして読者に問いかける最後の一文。小さい頃に読んだことがある人も、大人になって読むとまた違ったことを感じられるのではないでしょうか。
シンプルな線画の挿絵は和田誠さん
和田誠さんは、グラフィックデザイナーやイラストレーターとして多くの装丁やイラストを描かれています。「ぼくは王さま」の本では、シンプルな細い線でスッキリ可愛らしいイラストを描かれています。寺村輝夫さんのお話が想像力を掻き立てるようなストーリーなので、挿絵はかえってシンプルな方が良いのかもしれませんね。
幼稚園くらいの子に読み聞かせがおすすめ
本文中には漢字が使われています。簡単なものが多いですが、「戦争」「兵隊」など難しい漢字もところどころに使われています。すべてふりがな付きなので1・2年生でも読めると思いますが、漢字が嫌いだったり読書に慣れていない子にはちょっとたいへんな本だと思います。
ただ、内容的には年長~1・2年生あたりが最も楽しめるのではないかと思います。大人が読み聞かせてあげるといいかもしれません。
うちのどんべー君は1年生の時によく読んでいました。幼稚園の頃に読み聞かせていたのを、1年生になってから自分で読み始めました。3年生のいまは全く読んでませんが・・・お母さんが読んであげたらまた楽しく聞いてくれるかなあ。