今日のおすすめ本
注文の多い料理店/野ばら(10歳までに読みたい日本名作)
宮沢 賢治(著), 小川 未明(著), 館尾 冽、坂本 コウ(イラスト), 加藤 康子(監修)
巻頭カラーの「物語ナビ」でお話への興味がわく
この本では、宮沢賢治の「注文の多い料理店」と「セロひきのゴーシュ」、小川未明の「月夜とめがね」「野ばら」「月とあざらし」の計5つのお話が読めます。短くて読みやすいので、学校の読書時間に読んでみるのもいいかもしれません。
他の「10歳までに読みたい日本名作」シリーズと同様に、巻頭カラーの「物語ナビ」というコーナーで、それぞれのお話についての紹介が書かれています。「セロ弾きのゴーシュ」に出てくる「活動写真館」のように、小学生にはなじみのない言葉の解説をつけてくれているのはありがたいです。本編中にも、わかりにくい言葉には注釈があるので、小学生でも無理なく読めるようになっています。
また、原作者である宮沢賢治と小川未明についての紹介もあって、名作に親しめるよう工夫がされています。
意外な展開の「注文の多い料理店」と、不思議な動物たちが出てくる「セロひきのゴーシュ」
「注文の多い料理店」は、初めて読む人には驚きの展開のストーリーです。子どもたちがハラハラしながら読めるお話だと思います。このお話の最後の方の、顔が紙くずのようになるという表現が私は好きですね。ユーモアのある表現だなあと思って。
「セロひきのゴーシュ」は、ゴーシュと不思議な動物たちとのふれあいが描かれていて、ゴーシュの成長の物語でもあります。私はどうも、このゴーシュという男が苦手です。でも動物たちは、このゴーシュの成長のために出てきてくれたんですよね、きっと。それぞれ、その動物らしい方法でゴーシュの音楽的成長を助けようとしているように感じられました。たぬきなんて想像するとかわいらしくて笑っちゃいます。
「月夜とめがね」など、幻想的な小川未明作品が3つ
実は、小川未明の作品はあまり好みではないと思って読まず嫌いでしたが、この本で読んでみて他の作品も読んでみたくなりました。
「月夜とめがね」のようなお話は、ゆっくりじっくり読むと良さがわかる作品です。情景や色、音、かおりなど、イメージしながら読むと楽しめます。イメージしづらい時は挿絵が大いに助けになってくれます。でも、自分の頭の中で想像するほうが、このお話の世界をより味わうことが出来るかもしれません。
また、「野ばら」は、青年のその後がはっきりとわからないまま話が終わります。お話の内容から、いろいろな結末を想像してみるのも読書の楽しみの一つです。
名作にふれる機会の少ない小学生におすすめ
よほどの読書好きの小学生でないと、普段はなかなか読まないタイプのお話だと思います。だからこそ手にとってもらいたいですね。