今日のおすすめ本
ギリシア神話(子どものための世界文学の森 28)
トマス ブルフィンチ(著), 深沢 真由美(イラスト), 箕浦 万理子(翻訳)
易しく書かれたギリシア神話
ギリシア神話は、古くから言葉で語り継がれてきたお話です。哲学的だったり教訓めいていたり、小学生には難しそうに思えますが、この本では子どもたちの興味をひくようなお話がわかりやすい言葉で紹介されています。
神話なので神様がたくさん出てくるのですが、私たち人間のように喜怒哀楽があって、時には愛憎劇を繰り広げたりするのが面白いところですね。
また、世界のなりたちや、人間や自然がどんなふうに生まれたのかなど、興味深いお話がたくさんあります。1話目のプロメテウスの神話の前に「はじめに」という項目があるのでここから読んでいくとわかりやすいと思います。
エコーやパンドラ、ナルキッソス。きっとどこかで聞いたことがある名前やお話が出てくる
自分が大好きな人のことをナルシストと言いますが、その言葉の元になったお話が「ナルキッソス」の神話です。ナルキッソスが水に映った自分の姿を見て、それが自分自身だと気づかずに好きになってしまう…というお話です。
これには「エコー」という美しいニンフ(妖精)が出てきます。エコーはこだまのことですね。ヤッホーというと返ってくる、あれです。私はナルキッソスの神話を読んだことがなかったので、このお話にエコーが出てくることを知りませんでした。なんだか二人の知り合いにいっぺんに会ったような気持ちになりました。
他にもパンドラや、耳がロバになってしまった王様の話など、どこかで聞いたことがあるけど実はよく知らないなあというお話が出てきます。そういう話を詳しく知ってると、ちょっとかっこいいですよね!
ギリシア神話の世界観を表現した美しい挿絵
イラストは、今どきの小学生が好きな絵柄ではないかもしれません。それでも、ぜひ子どもたちに読んでみてほしいです。このギリシア神話を読めば、挿絵のイラストとお話の雰囲気がとても合っていると感じられると思います。
私は特にモノクロの線画の挿絵が好みです。髪の毛や服のひだ、顔の表情など細かく描かれています。ところどころにカラーの挿絵もありますが、モノクロが多いです。モノクロの挿絵の方がイメージを限定せずに読者の想像をふくらませることができるという良い面があります。
オールカラーの本が多い時代ですが、カラーの挿絵にたよらずに想像する楽しさも知ってほしいものです。こういう本は絶版にならないでほしいですし、現代風に挿絵を変えるなどということはしないでほしいですね。
小学4年生までに習う漢字を使い、ふりがな付きで読みやすい
ちょうどいい具合に漢字が使われていて、ふりがなもあって読みやすいです。
短いお話がいくつも入っているので、読書が好きな子なら小学校低学年でも無理なく楽しめると思います。難しそうだからと言って読もうとしない子には、いくつか大人が読んであげてもいいかもしれません。